令和6年8月末に九州を台風が襲ったが、宮崎市の一部地域では竜巻被害が発生した。竜巻による突風で、屋根瓦どころか屋根自体が吹き飛ばされたり、駐車場の自動車が横転したり、看板が飛ばされたりと、大きな被害が発生し、被害に遭われた人がマスコミに「これからどうやって生きていけばいいのか・・・」と途方に暮れていた。
被害回復のために先立つのはお金だ。
そこで、まず確認したいのは、家や家財に火災保険を掛けているかどうかである。
世間では「火災保険」という言葉が使われるが、「火災」だけでなく、台風や竜巻による「風害」による損害も、通常はカバー(補償)される。
もちろん火災保険の対象は「家」と「家財」では区別されているので、「家」の修理代は補償されるが、雨でダメになった家財道具までは補償されないということもある。
火災保険が使えるかどうか、とにかく保険証券を確認して、それでも分からなければ保険会社の担当者に問い合わせてみることをお勧めする。
問題は、火災保険を掛けていない場合である。
自分が被害者になる場合と加害者になる場合の二通りがある。
自分が被害者になる場合というのは、例えば、隣の家の屋根瓦が風で飛ばされてきて、自分の家の窓ガラスを割ったとか、隣家の庭の木の枝が折れて、自分の家の駐車場に停めていた自動車にぶつかって車のボディーに傷がついたとか、とにかく第三者の所有物(前記の例では、屋根瓦や庭の木の枝)が原因で損害を受けた場合である。
被害を受けた立場としては、割れた窓ガラス代や自動車の塗装代を支払ってもらいたいと考えるのも無理はない。
自分が加害者になる場合というのは、上記の例で、風で飛ばされた屋根瓦の家や庭木の所有者という場合である。
世間では、台風や竜巻のようないわゆる「自然災害については、自然現象」だから損害を賠償するよう所有者に請求することはできないし、隣人から賠償を求められても賠償に応じる責任はないと考えている方が多いようである。
しかし、法律的には「自然災害による結果については責任は問えない、責任は負わない」という理解は必ずしも正しいとは言えない。
法律的には、飛ばされた屋根瓦や庭木の枝の所有者に不法行為責任があるかどうか、「過失」があるかどうかで、損害賠償義務があるかどうかが決まる。
「過失」とは、ごく平たく言えば「落ち度」という意味で、家の所有者に屋根瓦が飛ばされる事態が発生したことについて落ち度があるかどうかということで、例えば、古い建物で、屋根瓦が一部剥がれていたり、浮き上がっているような状態で、今回の台風以前から、「あそこのお宅の屋根瓦は危なっかしい」と近隣住民が認識していたという事情があれば、通常は、その家の所有者には、屋根瓦の管理不行き届きという落ち度があり、過失があることになるから、賠償責任があるという結論になる。
ただし、仮に所有者が瓦の管理を怠っていなかったとしても、屋根瓦が飛ばされるという結果は変わらなかったであろうという特別な事情、例えば、竜巻による突風が吹いた場合は、もはや屋根瓦の管理不行き届きが原因ではなく、突風による想定外の強風が原因ということになって、所有者に、過失はなく、したがって賠償責任もないという結論になる。
いろいろと込み入ったことを書いてきたが、火災保険に加入していればそれに越したことはない。
ところで、火災保険では、地震による建物損壊などは補償されないことは、言うまでもない。地震による損害は、地震保険でカバーされるが、保険料が高いため、契約している人は少ない。