令和6年9月26日、静岡地裁が、袴田さんに対して、無罪の判決を下した。
何年も前に、偶然、BS放送か何かで「BOX 袴田事件 命とは」という映画を見た。
ネットで検索してみると、2010年公開の映画で、その後DVD化もされているようだが、無実を訴え続けても認められず、死刑執行の恐怖に毎日おびえながら獄中生活を送る袴田さん役の俳優が次第に精神を病んでいく姿(拘禁症状)が鮮明に記憶に残っている。
静岡地方裁判所の無罪判決に対して、検察官は、判決に不服があれば、東京高等裁判所に不服申立て(「控訴」(こうそ)という。)することができることに法律上なっている。
控訴がなされると、東京高等裁判所の裁判官は、静岡地方裁判所の裁判官が書いた判決書の「被告人は無罪」という結論(「主文」という。)とその結論に至った推論過程・理由(「判決理由」という。)に不合理な点がないかを吟味し、不合理な点があれば、無罪判決を「破棄する」という判決を出し、不合理な点が見当たらなければ、検察官の控訴を「棄却する」という判決を出す。
判決に不服があるとして、控訴できる期間は、判決(9月26日)の翌日から起算して14日間なので、現在、検察庁では、静岡地裁の判決に対して、控訴するかどうかを検討中だ。控訴状が裁判所に提出されないまま14日が経過すれば、無罪判決は確定し、裁判は終了する。
もしも、14日以内に控訴状が提出されれば、その後、東京高等裁判所でさらに審理が続き、いずれ東京高等裁判所で判決が出されるが、その判決にも不服なら、不服な方は、最高裁に上告できることになっているので、最高裁判決が出るまであと何年かかるか分からない。
検察官が袴田さんの事件の判決に対し、控訴するかどうかが注目だが、もし今回の静岡地裁判決の理由が「検察官が提出した証拠だけでは犯罪の証明があったという確信が持てない、つまり証拠が不十分だから無罪とする」という内容だったなら捜査機関も「不本意だけど、証拠不十分と言われるなら、しょうがない。」と渋々ながら控訴を断念するかもしれない。
しかし、今回の判決は、証拠不十分と言うだけにとどまらず、捜査機関が「証拠を捏造」したという認定がなされている。これの判決で検察官が控訴しなければ、検察・警察は「証拠を捏造」したとの裁判官の認定を受け入れたと世間から受け取られかねないから、意地・面子にかけて控訴しようと考えるかもしれない。
58年もの間、毎日死刑執行の恐怖にさらされ続けた人生。死刑以上に過酷な生き地獄の日々だったろう。袴田さんがこの裁判から一日も早く解放されることを願いたい。