8月も残りわずか。児童生徒の夏休みが終わり、新学期が始まる。この時期になると思い出すのが小学校のときの給食指導についての一風景だ。
小学2年生のころ、同級生の中に、目がクリクリっとして愛らしいけれど、クラスで一番背が低く、やせていて、青白いくらいの顔色の女の子がいた。
その子は牛乳が苦手のようで、毎日、給食時間の終わり、昼休みの始まりを告げるチャイムが鳴っても、3分の1ほど残った牛乳を飲み切れず、席に座っていた。
担任教師は、その子に牛乳を飲み切るまで、席から離れないように指導していた。きっと牛乳を飲むことで、成長期に必要な栄養摂取を促したり、食べ物を粗末にしてはいけないことを教える、好き嫌いのない大人に成長してほしい等の教育的配慮からの指導だったのだろう。
しかし、その子は昼休みが終わり、掃除時間を知らせるチャイムがなっても、牛乳を飲み切れず、着席していた。
掃除が始まると、教室の床で掃いたり、雑巾で拭く作業をするために、机といすはすべて教室の片側半分に押しやられる。押しやられた机といすの間に挟まれても、その子は掃除が終わり、午後の授業が始まるまで、ずっと牛乳瓶の前に座らされていた。
その子は、どんな思いで牛乳瓶を見つめていたのだろう。
今の自分なら、教師の目を盗んででも、その子の牛乳をなんとか処分しようとするだろうが、小学2年生だった当時の自分には無理なことだった。
もう50年も昔のことなのに、小学校・給食・牛乳というキーワードから想起される風景である。
今の時代の小学校では、牛乳嫌いの児童へどのような指導をしているのだろう。